NaI検出器の測定値不良について
 
1 経 緯
  東海村臨界事故を踏まえ、伊方発電所周辺の環境放射線モニタリングを強化す るため、平成12年度に、伊方越、川永田、豊之浦、加周、大成のモニタリング ポスト5局を増設し、平成13年4月から測定を開始している。
 (既設の九町越局は昭和50年度、九町局、湊浦局は昭和55年度から測定。)
  モニタリングポストには、信頼性向上のため測定器を二重化しており、低線量 率領域を測定するNaI検出器と、高線量率領域までの広範囲な測定が可能な電 離箱検出器の2つの測定器を設置しているが、今回、三菱電機叶サのNaI検出 器のローカルコントローラ(測定したデータの演算部)の不良により、4月から 8月までの間の放射線測定値が低めに表示されていることが確認された。
  なお、同種の測定器を整備した他県においても、同様の事例が発生している。
                           
2 測定値不良の概要
  NaI検出器については、「連続モニタによる環境γ線測定法」(科学技術庁 編 平成8年改訂)に基づき、50keV〜3000keVのエネルギー領域の放射線を測 定することとなっているが、三菱電機鰍フ工場試験において、NaI検出器のロ ーカルコントローラー(測定したデータを演算する部品)のエネルギー領域の下 限の設定が測定局毎に106〜120keVと、50keVより高めに設定されていたため、 低エネルギーの放射線が計測されていなかったことから、測定値が最大10%低 めに表示されていた。
  なお、上限の設定についても、2895〜3314keVと、3000keVから上下にずれて いるものがあったが、3000keV前後の計数率が小さいため、線量率への影響は軽
 微と考えられる。                       (keV)
   測 定 局  基準値 伊方越 川永田 豊之浦 加 周 大 成
設定されていた
エネルギー範囲
下限   50±10  111   109   120   106   115
上限 3000±10 2965  2942  3081  2895  3314
 
3 原 因
  三菱電機では、JISに基づき、Co-60及びCs-137の基準線源による線量率の 指示誤差試験は適正に実施していたが、エネルギー依存性試験において、低エネ ルギーの基準線源による確認を行っていなかったこと、及び、エネルギー範囲の 調整試験において、エネルギー領域の設定値と実際の信号値を比較・確認しなか ったことが、今回の原因である。
  なお、三菱電機製のNaI検出器は、13年4月に本県を含めて5県で導入さ れており、既設局を更新した県において、過去と比べ測定値が若干低くなったこ とから、三菱電機で原因調査していたところ、ローカルコントローラの調整が不 備であることが確認されたものである。本県の5局の測定局については、新設局 であったため、過去の測定値との比較ができなかった。
 
4 復旧状況
  三菱電機からは、8月30日に県衛生環境研究所に部品不良の報告があり、9 月1日までに、5測定局において、エネルギー領域が正しく設定されたローカル コントローラーに取替えられ、正常状態に復旧した。
  なお、県としては、新しいローカルコントローラーの工場試験記録を確認する とともに、5局のモニタリングポストについて、可搬型NaIシンチレーション 検出器による並行測定等を実施し、正常値に復帰していることを確認した。
 
5 他の測定器の健全性
 (1) 伝送式可搬型モニタリングポスト
   同時期に三菱電機鰍ゥら購入した、緊急時用の伝送式可搬型モニタリングポ  スト3基についても、NaI検出器及び半導体検出器のローカルコントローラ  ーに同様の不良が確認されたので、9月17日までに改善を完了した。
   なお、当該測定器については、4月以降、測定計画に基づく測定には使用し  ていない。
 (2) その他の測定器
   その他、他社製のNaI検出器については、工場試験記録の確認及び他の測  定器による並行測定により、エネルギー領域が適正に設定され、正常であるこ  とを確認した。
   また、電離箱検出器については、NaI検出器と同様の部品はなく、並行測  定により、測定値が正常であることを確認した。
 
6 放射線監視への影響
  今回の5ヶ所のモニタリングポストのNaI検出器の測定値の異常について  は、測定値が最大約10パーセント低下していたものであるが、既設の県3局や 四国電力鰍フモニタリングポストと同様の変動を示していること、併設されてい る電離箱検出器は正常な測定値を示しており、NaI検出器の測定値と同様の変 動を示していることから、これまでの伊方発電所周辺の放射線監視には、大きな 影響はなかったものと考えられる。
 
 ○新設5局の測定値


 
ローカルコントローラー
取替前の測定値
ローカルコントローラー
取替後の測定値
取替前後の変化率
 
  11.8〜22.1(nGy/時)  12.9〜22.6(nGy/時)   1%〜+10%
 ○原子力防災上の判断基準

 
Aレベル(異常事象) Bレベル(特定事象) Cレベル(緊急事態)
150 (nGy/時) 5000(nGy/時) 500000(nGy/時)
 
7 測定値の取扱い
  5局のモニタリングポストのNaI検出器の測定値については、測定局毎に最 大10%低下しているため、その測定値の取扱について検討する必要がある。
  測定値の取扱については、次の方法が考えられる。
 






 
  取扱方法         考    え    方   
案1

 
実測値をそのまま使用
(誤差があったことを注記)
並行して測定しているスペクトル評価値との比較、計数誤差、測定器の調整誤差等から、今回程度の差は許容される。
案2

 
測定値を使用しない
(使用しない理由を注記)
実測値そのままの数値を採用しても、係数補正しても、正確な数値とは評価できない。     
 
 
8 再発防止対策
  三菱電機鰍ノおいては、エネルギー領域の設定値と実際の信号領域の比較・確 認、低エネルギー領域における基準線源等による校正試験の実施等を追記した工 場試験時のマニュアルを改善するなど、再発防止対策を徹底した。
  県においても、工場検査等を行い、調整試験や校正試験の状況を確認するなど 物品検査を強化するとともに、設置後も定期的な並行測定の実施等による測定値 の妥当性確認など測定器の管理を強化し、測定器の健全性を確保することとする。